現在進行中の研究


  • 高度回遊性魚類(サケ科・マグロ属)の行動生態学的研究


バイオロギング,室内実験,漁獲資料解析,海洋環境データ解析,稚魚分布調査,食性調査,安定同位体分析,数理モデルなどを用いて,サケ科魚類の三陸沿岸・河川での行動生態について調査しています.地球温暖化の海水温上昇に伴う高度回遊性魚類の分布生息域の変化予測、移動過程、体温生理に関する研究なども展開しています(調査風景)。データの回収率を高めるための新しいバイオロギング・システムの開発も行っています。最近では、三陸沿岸での藻場における魚類相調査も行っています。

〔Topic 1〕天気が変わるとでサケの行動も変わる:大槌湾でサケ親魚(右上写真)に小型記録計を装着し、湾口で放流しました。放流直後,サケは水温躍層下への潜行行動を行っていましたが,10月7日以降,潜行時間が短くなっていました(下図)。また,潜行しても水温が低下せず,むしろ表層のほうが低くなっていました。これは,低気圧通過により沖合では鉛直混合が生じたため,湾内では降雨により低温の河川水が大量に流れ込んだためと考えられます。低気圧通過に伴う水温構造の変化に対する鉛直遊泳行動の変化は,この地域でいわれている「大雨で大量(大雨になるとサケが湾内の定置網に入りやすくなる)」という言葉を科学的に裏付けるものです。(Kitagawa et al. 2016)。





〔Topic 2〕クロマグロは日本沿岸で急速な成長を遂げ、栄養段階を上昇させる:沿岸に来遊したクロマグロの筋肉の炭素・窒素安定同位体を調べたところ、25cmを境に大きく栄養段階が上昇していることが分かりました。ふ化して日本沿岸に来遊後、食性をプランクトン食からイワシ類などのエネルギー価の高い魚食性に変化させ、内温性を獲得しながら、遊泳能力を高めていると考えられました (Kitagawa & Fujioka 2017)。


〔Topic 3〕魚群が作る水中竜巻: 渦形成によるホッケ魚群の摂餌戦略


◆研究業績・プロジェクト等:外部リンク(researchmap)

閉鎖型循環水層(通称:スタミナトンネル)に収容されたサケ(大気海洋研究所トッピクス)。代謝速度や遊泳能力の測定を行うことで魚の適水温や運動(回遊)に必要なエネルギーを推定することができる(Abe, Kitagawa et al. 2019:トピック記事はこちら)。

水温・水深記録計を装着したサケ(国際沿岸海洋研究センターで撮影)

クロマグロの成魚

クロマグロの卵:最大3 mを超すクロマグロも直径たった1 mmの卵から始まる。